肉の缶詰と言えば大和煮

肉の缶詰というと、焼き鳥缶と共に牛肉の大和煮を思い起こす人も少なくありません。甘辛の濃い味付けで、牛ならではのしっかりとした食感から、ファンの多い缶詰の一つです。とは言え、同じ牛缶であるコンビーフがサラダやオムレツ、サンドイッチの具など、さまざまな洋食レシピに利用できることに比べ、大和煮の場合、味に主張があり過ぎるぶん、他のどんな食材と合わせても、すべてが甘辛料理として完成することになります。甘辛味が好きな人にとっては、特に味付けすることなく、大和煮の缶詰の味だけで完成度がグッと高まるぶん、嬉しい食材とも言えます。
大和煮の濃い甘辛味は、素材の味をすべてねじ伏せる強烈さを持つことから、大正初期に大和煮の缶詰が発売されて以降、牛や鶏ばかりでなく、かつては一般的に食用にされていたクジラなど、やや匂いにクセのある肉も使われていました。缶詰以外でも、獣臭が強い肉も大和煮の甘辛味で臭みが中和され、普通に賞味できるようになることから、鹿やイノシシ、クマなど、狩猟によって得られた野生動物の肉が材料にされ、郷土料理にもなっていました。昨今、ジビエとして注目が集まっている鳥獣類の肉も、特にクセのあるものは大和煮での調理が向いていると言えます。実際、シカの大和煮は一部で人気を博しており、料理好きの人の中には、業務用のジビエとその他の種類を購入するなどして、大和煮がどこまでジビエを美味しくするかにチャレンジしています。
昨今、各地の山で鹿の食害によって貴重な植物が姿を消しつつあり、尾瀬一帯ではミズバショウと並んで人気が高かったニッコウキスゲが鹿によって食い荒らされ、ほとんど花が見られなくなってしまっています。国立公園内ということで簡単に駆除できないでいるうちに、取り返しのつかないほど食害が進んでしまった面があり、今後の対策も急がれています。ジビエで人気の種類とは言っても、一般的に鹿料理を浸透させるのは現実的でなく、鹿の大和煮缶詰の大量生産をして災害備蓄食にしたり、食糧難で特に肉が食べられずに困っている国々に援助物資として送るなど、駆除と共に有効活用の道を探りたいものです。海外でテリヤキ味が人気になった実績もあるだけに、意外に、大和煮の味付け自体、広く世界に好まれるようになる可能性もあり、鹿の効率的な駆除とヒット商品誕生の一石二鳥が狙える可能性があります。食品会社や政府にも、真剣に検討していただきたい案件です。
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